世界が壊れる音がする──『ドラッグオンドラグーン』が遺したもの

【狂気と破滅の空中叙事詩】ドラッグオンドラグーン(PS2)

ドラッグオンドラグーン パッケージ画像

1. 作品概要

  • タイトル:ドラッグオンドラグーン(DRAG-ON DRAGOON)
  • ジャンル:アクションRPG
  • 発売日:2003年9月11日
  • 機種:PlayStation 2
  • 開発:キャビア
  • 販売:スクウェア・エニックス
  • ディレクター:ヨコオタロウ

2. 独自の世界観と物語

物語の舞台は、空を竜が舞う古の世界。女神による“封印”で世界の均衡を保つ「連合軍」と、それを否定し“天使の教会”を信奉する「帝国軍」が激しく争っていた。帝国軍は「赤い目」の病や巨大兵器によって急速に力をつけ、連合を圧倒していく。

主人公カイムは、妹フリアエ(女神)を守るため、瀕死のレッドドラゴンと契約し“声”を代償に契約者となる。戦火の中、仲間や親友イウヴァルトとともに帝国の陰謀に立ち向かうが、各地の封印は次々と破られていく。

やがてイウヴァルトは劣等感と執着心から闇堕ちし、帝国側につきフリアエを連れ去る。カイムは彼女を救うべく、契約竜と共に空中要塞へと飛び立ち、世界の命運を賭けた戦いに挑む――。

3. 主人公と主要キャラクター紹介

  • カイム(CV:池畑慎之介)
    24歳 / AB型 / 紋章:舌
    本作の主人公で、滅亡した小国カールレオンの元王子。両親を帝国軍に殺され、妹フリアエを守るため竜と契約。代償として「声」を失う。剣・槍・斧など多様な武器を使いこなす戦闘の達人。
  • レッドドラゴン / アンヘル(CV:ピーター)
    年齢不明 / 雌 / 誇り高き竜。瀕死の状態でカイムと契約。神の封印に深く関わる存在で、カイムとの関係性は物語の中核。
  • フリアエ(CV:初音映莉子)
    19歳 / B型 / 紋章:女性器
    女神の役割を担うカイムの妹。自由を奪われた宿命を受け入れながらも兄に秘めた想いを抱く。悲劇的な結末を迎えるルートも。
  • イウヴァルト(CV:唐沢寿明)
    20歳 / A型 / 紋章:首
    カイムとフリアエの幼馴染。フリアエへの想いと劣等感から帝国側に転じる。闇堕ちする重要人物。
  • レオナール(CV:山寺宏一)
    32歳 / 紋章:眼球
    盲目の神官。弟たちを失った絶望から契約者となる。礼儀正しくも内面に闇を抱える。
  • アリオーシュ(CV:林原めぐみ)
    24歳 / 紋章:下腹部
    家族を失い狂気に堕ちた元エルフ。殺戮と子供への執着が暴走する凶戦士。
  • セエレ(CV:村上想太)
    6歳 / 紋章:全身
    「時」を失った少年。良い子を装う仮面の裏に葛藤を抱え、妹マナを探して旅する。

4. ゲームシステム

地上戦・空中戦・低空戦の三つのバトルスタイルを行き来しながら、無数の敵をなぎ倒して進むアクションRPGです。

プレイヤーは主人公カイムを操作し、契約竜であるレッドドラゴンへの騎乗、あるいは契約者との交代によって多彩な戦闘スタイルを展開できます。武器は剣・槍・斧・杖など様々な種類があり、成長に応じて見た目や性能が変化。また、契約者を召喚することで、一時的に彼らの固有スキルや魔法を活用することも可能です。

さらに特徴的なのが「武器物語(ウェポンストーリー)」の存在。武器を育てることで、かつての持ち主や武器にまつわる物語が4段階に分けて解放されていきます。

5. マルチエンディング(全5種)

『ドラッグオンドラグーン』には、物語の進行条件によって分岐する5つのエンディング(A〜E)が存在します。進行するほどに世界観は破滅的かつ異質さを増し、プレイヤーに強烈な印象を残します。ディレクター・ヨコオタロウは、本作の結末に『エヴァンゲリオン』の影響があることを明かしています。

  • Aエンディング:妹を失いながらも戦いを終え、竜アンヘルが封印として残る。世界は一時的に救済される。
  • Bエンディング:フリアエが怪物として復活し、世界中に同様の存在が孵化する終末的展開。
  • Cエンディング:ドラゴンの本能に従い、人類を襲う存在に。カイムがアンヘルを自らの手で討ち、戦いに酔いながら終わる。
  • Dエンディング:神の具現である母体が出現し、仲間が犠牲となる中、セエレが時間を封印して世界を止める。
  • Eエンディング:2003年の新宿に出現した母体とカイム・ドラゴン。戦闘機によって撃墜される衝撃のラストは『ニーア』シリーズへと繋がる。

6. 続編・スピンオフ作品

  • ドラッグオンドラグーン2(PS2 / 2005年): Aエンドをベースに、ノウェを主人公とした18年後の物語。
  • ドラッグオンドラグーン3(PS3 / 2013年): 前日譚的な位置づけ。契約や女神の起源に迫る。
  • ニーア ゲシュタルト / レプリカント(PS3 / 2010年): Eエンドから1000年後の世界を舞台にしたスピンオフ的作品。
  • ドラッグオンドラグーン1.3(小説 / 2014年): 『DOD3』のAエンドから分岐したIF世界。契約の概念が存在しない異世界線を描く。

7. 今なお語り継がれる魅力

ドラッグオンドラグーンは、その異端の世界観と狂気に満ちた演出、「人間の業」や「禁忌への愛情」など重厚なテーマで多くのファンを惹きつけ続けています。ヨコオタロウ作品群の原点として、今なお語り継がれる“伝説の問題作”です。


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